POW研究会トップ活動報告学習会・講演会>麻生鉱業捕虜使役問題の経緯
 
学習会・講演会

麻生鉱業捕虜使役問題の経緯

内海愛子・福林徹・西里扶甬子・田村佳子

日時:2009年1月24日
場所:大阪経済法科大学麻布台セミナーハウス

2006年頃から、当時外相だった麻生太郎氏の親族企業が戦中朝鮮人や捕虜を使役していた問題が海外メディアを中心にクローズアップされ、また2008年9月に同氏が首相に就任するとさらに再燃し、国会でも追及されるようになった。POW研究会も資料や情報提供などを通してこの問題に関わったことから、学習会でこの問題の経緯を報告することになった。

2006.5.6.

在日の英ジャーナリスト、Christopher ReedがJapan Focusに“Family Skeletons: Japan’s Foreign Minister and Forced Labor by Koreans and Allied POWs”(外聞はばかる一族の秘密:日本の外相と朝鮮人・連合軍捕虜強制労働)と題した記事を寄稿。
 この記事が反響を呼び、英GuardianやJapan Timesなどが報道。

 >>Japan Focus, 2006.5.6(The Asia-Pacific Journal:Japan Focus ウェブサイト)

2006.7.

麻生外相、大阪・重願寺の法要への出席を計画し、旧連合国の大使らを誘うが、直前に撤回し、単独で“私的に”参拝。
 これがJapan Times, 豪The Australian, 英Times, 米ABCなどで報道される。
 7月4日の外国プレス向け記者会見で、外務省スポークスマンは、麻生鉱業の捕虜使役の事実に否定的なコメントを発表。外国人特派員クラブの日本人メンバーが、重願寺参拝の計画がなぜ変更されたのかを問うと、同スポークスマンは「事実に反した話を含む悪意ある報道があった」と答える。

 >>Japan Times, 2006.7.4(The Japan Times ONLINE ウェブサイト)

2006.11.

New York TimesやInternational Herald Tribuneが麻生鉱業の捕虜使役に関する記事(Onishi Norimitsu記者)を掲載。
 これに対し、ニューヨークの日本総領事館がホームページに反論を掲載。
 ——「日本政府は一私企業である麻生鉱業の当時の雇用形態や状況についてコメントする立場にないが、日本政府は同社が強制労働者を使役していたといういかなる情報も受け取っていない。証拠の提示もなしにこのような批判的な記事を書くのは全く不当である」

2007.5.

久留米工業大学教授William Underwood氏が、POW研究会員福林の提供した1946年の「麻生鉱業報告書」(米国国立公文書館所蔵)などをもとに、Japan TimesやJapan Focus、シンガポールのStrait Timesなどに記事を書く。

 >>Japan Times, 2007.5.29 (The Japan Times ONLINE ウェブサイト)
 >>Japan Focus(The Asia-Pacific Journal:Japan Focus ウェブサイト)

2007.7.

William Underwood氏がJapan TimesやJapan Focusなどに「麻生百年史」に関する記事を掲載。この記事を書くために、同氏は外務省の麻生事務所に「麻生鉱業報告書」のコピーをメールで送り、麻生外相の秘書官に電話でインタビュー。
 最初の電話で村松秘書官は、麻生鉱業に捕虜がいたことは認めたものの、“強制労働”があったかどうかは疑問だと答える。
 2回目の電話でUnderwoodが「1500頁もある『麻生百年史』に、300人の捕虜のことがなぜ出てこないのか?」と問うと、村松秘書官は敵対的になり、「麻生鉱業に捕虜がいたことは認めない」と答える。

2008.9.

麻生太郎氏は、首相就任直前の外国人特派員への記者会見で、麻生氏の親族企業の捕虜使役に関し「なぜあなたは謝罪しないのか?」との質問に、「私は終戦時にほんの5歳で、これらのことについて何の記憶もない」と答える。

2008.10.

『週刊現代』が麻生鉱業の捕虜使役に関する記事を掲載。その他、ロイターが麻生鉱業の朝鮮人労働者使役に絡めて捕虜についても言及、New York Timesが田母神論文に絡めて麻生捕虜問題にも言及。
 Underwood氏がJapan Timesに記事掲載。

 >>Japan Times, 2008.10.28(The Japan Times ONLINE ウェブサイト)

2008.11.13.

『参議院外交防衛委員会で、民主党の藤田幸久議員が米国国立公文書館所蔵の「麻生鉱業報告書」(P研福林提供)を提示し、麻生鉱業の捕虜使役について麻生首相、中曽根外相に質問。
 これにより、厚労省は調査を約束、旧俘虜情報局から引き継いだ資料を開示するに至る。

2008.12.18.

参議院外交防衛委員会で、藤田議員が引き続き中曽根外相、及川厚労省審議官に質問。政府は厚労省の資料を提示し、麻生鉱業の捕虜使役を正式に認める。
 これにより、外務省の記事、およびニューヨークの日本総領事館のHPに掲載されていた反論記事が削除される。このことが国内外各紙で報道される。

 >>New York Times, 2008.12.20(The The New York Times ウェブサイト)

2009.1.6.

衆議院本会議代表質問で、民主党の鳩山由紀夫幹事長が麻生首相に質問。同首相は、麻生鉱業の捕虜使役を初めて公式に認める。海外各紙の報道が続く。

 >>ABC News, 2009.1.7(ABC News ウェブサイト)

2009.1.7.

参議院本会議代表質問(山下八洲夫民主党副会長VS麻生首相)

2009.1.8.

衆議院予算委員会(仙谷由人衆院議員VS中曽根外相)

2009.1.9.

衆議院予算委員会(枝野幸男議員VS麻生首相、中曽根外相)

2009.1.19.

参議院予算委員会(峰崎直樹議員VS麻生首相)

福林・西里・笹本 文責